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令和8年4月の建築家コラムをお届けします
春の暖かさを感じる今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。 52回目のゲストは「一色 ヒロタカ(イッシキ ヒロタカ)」さんです。 一色さんは建築設計事務所irodoriの代表と、オンデザインのパートナーを務められています。また実践女子大学環境デザイン学部では、准教授としてコミュニティデザイン研究室を預かられています。 「身の回りの社会を、楽しく動かすこと」をテーマに、建築設計やまちづくり、ブランディング等を手がけ、新築住宅・マンションリノベーションなどの住宅設計や、様々な施設(民間・公共)の設計を手掛けられています。 一方では、DIYでのインクルーシブデザインや社会実験など、多岐にわたるジャンルのデザインで社会へアプローチされていらっしゃいます。 今回、一色さんからどんな「床」にまつわるお話が聞けるのかとても楽しみです。 それでは一色さんのコラムをお楽しみください。 株式会社 irodori https://studio-irodori.jp
一色 ヒロタカ建築家/irodori代表取締役/実践女子大学生活環境学科 准教授 1981年 千葉県生まれ。 2006年 千葉工業大学大学院修了 2006年 山本理顕設計工場 (〜08年) 2009年 オンデザインパートナーズ (〜現在) 2015年 irodori設立(〜現在) 2024年 実践女子大学環境デザイン学部 准教授(〜現在) 2023年 南三陸ワイナリー第2回JIA東北建築大賞2022「優秀賞」 2024年 ひゃくとわ第49回北海道建築建築賞「北海道建築奨励賞」 2024年_南三陸ワイナリー グッドデザイン賞「BEST100賞」及び「グッドフォーカス賞[地域デザイン]」受賞 模型という「小さな建築」からリアルな素材を創造する
近年、デジタル技術の進化によって、建築の打ち合わせ風景は大きく変わりつつある。図面やパースに加え、VRやAIといった技術が当たり前のように使われるようになり、建築のイメージはこれまで以上に自由に、立体的に共有できるようになった。空間は画面の中で容易に体験され、まだ存在しない建築が、あたかもそこにあるかのように感じられる時代である。 それでもなお、建築模型という存在は揺らいでいない。むしろ、その価値は別のかたちで際立ってきているように感じる。私たちの事務所において模型とは、単なる説明のための道具ではなく、「小さな建築」として設計されるものだ。実際に建つ建築とは異なる存在でありながら、そこには確かにひとつの空間が立ち上がり、手の届く距離の中で静かに佇んでいる。 縮尺1/30で制作した「大地の住処」という住宅の建築模型
模型をつくるとき、私たちは常に、どこまでをリアルにし、どこを抽象化するのかを考えている。素材感はできるだけ丁寧に表現する。一方で、すべてを現実の通りに再現することが目的ではない。むしろ、わずかな省略やズレが、見る人の中に想像の余白を生み出し、そこにそれぞれの暮らしのイメージが入り込んでいく。
模型を覗き込むと見えてくる様々な床の表情
特に印象的なのは「床」の存在だ。模型は多くの場合、上から覗き込むように見られる。そのとき、最も広く視界に入るのは床である。だからこそ模型においては、実際の建築以上に床の表情が空間の印象を決定づける。光の当たり方や色のにじみ、わずかな質感の差異が、空間全体の空気を静かに支配していく。
フローリングをつくる際の模型用の棒状ヒノキ材や模型道具と、実物フローリンングのカットサンプル
もちろん、模型に使われる素材は実物とは異なる。例えばフローリングはヒノキ材で表現し、水彩ペンで着彩する。実際の材料とはかけ離れているが、それは単なる代替にはならない。カットサンプルのような実物の断片と並べられたとき、両者は対立するのではなく、むしろ行き来できる関係として立ち現れる。模型の中の素材は、現実を指し示しながらも、そこから少しだけ離れることで、これから始まる暮らしの風景へと静かにひらかれていく。
実際に完成した「大地の住処」」のインテリア空間と床
模型はフェイクではない。それだからといって、現実そのものでもない。そのあいだにある、曖昧で豊かな領域を扱うものだと思う。その領域をどのように立ち上げ、どのように感じ取ってもらうのか――それを設計することが、模型という建築の技術なのではないだろうか。
模型の前に立つとき、そこには小さな対話が生まれる。手を伸ばせば触れられる距離の中で、まだ存在していないはずの暮らしが、うっすらと輪郭を持ちはじめる。その曖昧さと確かさが同時にある状態こそが、模型の持つ力であり、私にとっての「小さな建築」の価値なのだと思う。 Photo by 鳥村鋼一
一色さん、ありがとうございました。 建築模型は奥が深いですね。 本物と変わらないリアルな建築模型があるとすれば、それを見る人達は比較的同じイメージを共有できそうですが、模型に抽象さが混ざっていると、見る人それぞれの素材に対する感覚や想像力によって、違う空間イメージが立ちあがってくるような気がします。 模型は単に建築の立体的な姿を見せるだけでなく、その建築空間をより身体に近づける装置のようなものだと感じました。 これからもますますのご活躍をお祈りしております。どうもありがとうございました。 |
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