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皆さんこんにちは。
令和4年も6月にはいり蒸し暑い季節になってきました。体調管理には十分お気をつけください。 さて、今回で29回目となる建築家コラムのゲストは「 前田 茂樹 (まえだ しげき)」さんです。 前田さんはフランスのドミニク・ペロー建築設計事務所で10年間勤務された後、ジオ−グラフィック・デザイン・ラボ一級建築士事務所を設立され、大阪を拠点に全国各地でご活躍されていらっしゃいます。 今回、前田さんからどんな「床」にまつわるお話が聞けるのかとても楽しみです。 それでは前田さんのコラムをお楽しみください。 ![]() 前田 茂樹 まえだ しげき 2000〜10年ドミニク・ペロー建築設計事務所(フランス)にてチーフアーキテクトとして勤務した後、ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ一級建築士事務所を設立。 福井県高浜町にて漁業の6次産業施設UMIKARAや、奈良県三宅町にて交流まちづくりセンターMiiMoなど、建築(ハード)と使い方や仕組み(ソフト)を連動させた建築設計に携わる。 大阪府箕面市にて駅前広場、泉大津市にて公園施設の完成が2023年度に待たれる。 グッドデザイン賞2020、21年受賞、第31回AACA賞入賞。編著に『海外で建築を仕事にする』(学芸出版社、2013年)。 床と場
設計のプランニングでは、床に名称をつけて、この場所は事務所、この場所は閲覧室など、要求されている「使われ方」を平面図に記載する。しかし、「床」という言葉は、より原初的で、「使われ方」で定義されない場所を指す。つまり床は物理的なものであり、人がその上に坐したり、立ったり、移動することで、その床に居る人の視点をつくり、その視点があるからこそ(脳の中で)認識できる場所を生み出している。 もうすこし踏み込むと、場や景色自体は、その場所に既に存在しているが、床が出来て、視点が生み出される(拡張される)ことで風景となる。場所が持つ無限の可能性から、「使われ方」に応じた視点や、今後永く変わらない風景を見出すこと、そしてその風景を見出す床をどこにどのように創るかが建築家の仕事の原初的な部分であると考えている。 床の地形がつくる場の多様性 ![]() 床に意識的になるきっかけはフランスで勤務していた時にさかのぼる。これは10年間勤めていたドミニク・ペローの事務所の近くにある公園だ。スタッフ仲間とランチにサンドイッチを食べに通っていた。公園の周囲の道路に勾配があり、床(芝生面)の微地形の増幅を行いつつ設計されたものである。公園内には歩行者専用の園路があり、芝生面には園路に接するところもあれば、奥まった場所、また丘のように盛り上がった場所もあるが、その場所の視点で毎日のランチをする場所を選んでいた。床に微地形があり、様々な角度や高さの場所があることは、視点の多様性をつくり、それがその場の居方の多様性、選択可能性に繋がっていることを実感した。
内外に生活の風景をつくる 8.5mの高度差を持つ傾斜地(同時に北側前面道路から最高高さを3m以内にする建築協定もあった)に、子供が遊べるプライベートな庭を確保したい、という要望を組み込み、敷地全体を庭と見立てて設計がスタートした。同じ風景でありながら、すべての部屋や屋外空間の床の位置を変えることで、異なった奥行のある風景をつくっている。リビングダイニングの床を110°に開いていることは、室内側からの視線の広がりをつくっている。と同時に、庭や周囲の風景を家の一部として取り込む効果がある。
周囲の風景を活かして、この場所にしかない視点をつくる 屋上のUMIKARAテラスは、視点を地上から4m上げることで、高浜町のシンボルである青葉山、海、集落が望める場所として設計した。日常的には、観光客はもちろん、地元の方や子どもたちも海・山・集落を見て過ごすことの出来るパブリックな場所でありながら、夏の繁忙期や連休では、高浜町、運営者、地域の有志が、BBQやフェスなど様々なイベントを主体となって開催できる、コモンの場所である。この漁村集落や海、そして山に囲まれた場所に、視点を4m上げるだけで、このような場所が出来ることを見抜くことが、設計において重要であると考えている。
地形のようなおおらかな多世代の居場所づくり 2階に配置した100人規模の学童に直接アクセスすることが出来る大屋根の下の大階段は、自然の地形のように、雨の日でも子どもたちが遊べる場所をつくりだしている。また役場の出入口に繋がる参道にかかる大屋根は、広場と建築が一体利用されるためのバッファとしてデザインされていることで、継続的な施設運営により行われる、多様な活動のための地形となっている。
前田さん、ありがとうございました。 前田さんの建築の事例を拝見すると、フランスの公園でのランチの経験が、建築および建築の周囲の環境にまでひろがる、人の心地よい場づくりや、人々が楽しく集える場づくりに非常に生かされているような気がしました。 今後の作品でどのような床の場ができるか非常に楽しみです。 これからもますますのご活躍をお祈りしております。 どうもありがとうございました。 2枚目:(C)Takashi Daibo 3枚目:(C)Yohei Sasakura 4枚目:(C)Yohei Sasakura |
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