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皆さんこんにちは。令和4年の最初のコラムです。
年が変わり、コロナ感染者はオミクロン株の高い感染力によって、残念ながら過去最高の感染者数を記録しております。引き続き、感染対策を意識して行動することが重要です。 さて、今回で27回目となる建築家コラムのゲストは「 木下 昌大 (きのした まさひろ)」さんです。 木下さんは滋賀県に生まれ、京都工芸繊維大学大学院を修了後、アトリエ事務所勤務を経て、キノアーキテクツを設立し、母校で教鞭を取りながら、東京と京都に拠点を持って活動されている建築家です。 今回、木下さんからどんな「床」にまつわるお話が聞けるのかとても楽しみです。 それでは木下さんのコラムをお楽しみください。 ![]() キノアーキテクツ、京都工芸繊維大学准教授。1978年滋賀県生まれ。2003年、京都工芸繊維大学大学院修士課程修了後、C+A、小泉アトリエに勤務。2007年にキノアーキテクツを設立。「最適化する建築」をコンセプトにオフィス、保育園、ホテル、商業施設、住宅など、さまざまな建築設計を行う。受賞歴にアルカシア建築賞金賞、日本建築学会作品選集新人賞、グッドデザイン賞ベスト100など。 私たちの日常生活は平らな面の上で展開している。現代の世界で、その平らな面をありがたがる人は多くないだろうが、人類はそれを得るために多くの技術を見出してきた。その結晶が「床」である。床は、生活のプラットホームであり、あらゆるアクティビティの受け皿になった。つまり、経済活動の基盤である。故に、床は経済活動におけるひとつの指標となり、特に高密度な都市においては、床面積をできるだけ増やすことが命題になってきた。 床の価値を量で試算するのは容易で、限られたスペースのなかに、より効率よく床面積を最大化させる方法を考えればいい。しかしながら、床面積の最大化には限界がある。建築家と呼ばれる我々が生き抜くためには、床面積を最大化させる能力だけでは不十分である。我々の務めは、簡単に測ることができない床の「質」を向上させることであり、その質に価値を見出すことである。 では、床の質とは何か、その質はいかにして設計ができるのか。そんな問いを意識して設計してこなかったが、改めてその視点で自作を振り返ることにした。すると、以下のような質の獲得が見つかった。 ■光の変化を映し出す床/ Akasaka Brick Residence 集合住宅の外壁が個々の住戸の床に変化を与えた事例。床面積を最大化するため、オーソドックスな基準階を繰り返す平面計画としたが、千鳥に配された透かし積みレンガブロックから漏れ入る光と影が床に投影され、単調なプランを刻一刻と変化する床へと変えている。 写真:阿野太一
写真:阿野太一
■内外の境界を溶かす床/大阪泉北ニュータウン茶山台団地 公団住宅をリノベーションする足がかりとして、床の境界を発展させた事例。上下足を使い分ける日本人は、床の素材やわずかな段差にも敏感である。玄関の土間を拡張させた曖昧な床が、多様なライフスタイルの受け皿となる。 写真:中村絵
写真:中村絵
■水平ではない床/福岡市立平尾霊園合葬式墓所 どこまでも続くユニバーサルな床を獲得することを目指した近代化の末に失った、水平でない床の豊かさを示す事例。合葬式墓所の献花台がある広場は、視覚的には傾いていることがわからないが、床は献花台に向かってわずかに傾き、円弧の壁で囲われた参拝所の求心性を高めている。 写真:中村絵
床の質がつくる空間の質、建築の質。量から質への転換で、求められる建築が変わり、建築家の活躍の場が拡がることを望む。
木下さん、ありがとうございました。 建築で床面積という言葉は頻繁に使われ、単に数字だけが認識されますが、光、段差、勾配によって床の質を向上させた事例を伺い、床の見方が変わる気がいたしました。 弊社も様々な床材を取り扱っておりますが、建築家の方々が、どのように床の質を高められているかということを意識しながら、今後、建築を見ていきたいと思います。 これからもますますのご活躍をお祈りしております。 どうもありがとうございました。 |
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