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こんにちは。
令和2年もあっという間に12月となり、残すところあとわずかとなってきました。 冬の乾燥シーズンを前に、コロナウイルスの感染者数の増加が気になります。 皆様におかれましても、感染対策を十分に行って健康に過ごされることをお祈り申し上げます。 さて、今回で20回目となる建築家コラムのゲストは「 伊藤立平 (いとうたっぺい)」さんです。 伊藤さんは、日建設計で8年間勤務した経験をお持ちですが、2011年より伊藤立平建築設計事務所を主宰し、現在は湘南・鎌倉と、大阪・関西の2地域を拠点として活動されている建築家です。 今回、伊藤さんからはどんな「床」にまつわるお話が聞けるのかとても楽しみです。 それでは伊藤さんのコラムをお楽しみください。 ![]() 1974年神奈川県鎌倉市生まれ。1998年東京工業大学建築学科卒業、2000年同大学大学院総合理工学研究科人間環境システム修了。株式会社日建設計勤務を経て、2011年伊藤立平建築設計事務所設立。主な作品に、木材ギャラリー「木の風景」、コミュニティ拠点「二本松の農園交流所」、木育拠点「長門おもちゃ美術館」などがある。主な受賞は、第1回建築人賞(日建設計在籍時)、JCD Design Award 2011 銀賞、SDレビュー2015 入選、第9回JIA中国建築大賞2017 特別賞、第12回キッズデザイン賞、ウッドデザイン賞2018、第14回木の建築賞、第22回木材活用コンクール 日本木材青壮年団体連合会会長賞など。 ●事務所のURL http://www.tappeiito.com 写真:生熊智 / Techni Staff 日々の暮らしと「床」
歴史を遡れば、人は昔から周囲の環境を整えて来ていたに違いない。一方、巣をつくる生物も多いことを考えると、「床」は人が可能な範囲で生きる策を講じてきた歴史の中にあり、思考が深まる以前からの営みが、後に言葉を与えられたものなのだろう。ただ狩猟の時代や遊牧生活の場合よりも、「高床式」という言葉が教科書に出てくるほど、農業を始め定住社会を選択したことで「床」はより意識されるようになったのかもしれない。 組織設計事務所時代に設計していた床は、建物や費用が比較的大きい、都市規模の、確固とした投資見込みの上に造られるものが多かった。高い技術に支えられ、耐震性を備えた床は直観的には数百年は軽く持ちそうで、産業化された社会の重厚さを物語っている(近代以降の建築ですら取り壊されてしまう事例もあるが)。 自らの事務所を初めてから、日々の暮らしについて考えることが多くなった。振り返ると、昔から続いている暮らしとその中に時折不連続性をもたらす建築(例えば新築という作業をし、過去が読めない条件の中で設計・施工を行うこと)の折り合いをどうつければ良いのかについて、考えることが増えた。 「南相馬のシェルフ」高見公園内の小さなパブリックスペース 写真:山田 圭司郎 / YFT,
震災直後の時期、福島県南相馬市での復興活動では、くまなく除染され安全な外部(公園)が実現したことが、屋根のある室内の床よりも貴重に感じた。その感動もあり、綺麗な土の上にそのまま家具を配置した。 「二本松の農園交流所」傾いた蔵や老朽化した納屋を改修 写真:山田 圭司郎 / YFT,
同じく福島県二本松市では震度6強の地震で地面が沈み蔵が傾き、ジャッキアップで補正しながら床を水平に張り直した。傾いた床での数年間の農作業は大変身体に負荷がかかったとのこと。先祖代々続く農家の床下からは根太替わりの古い電柱や、竈土間に貼られていたタイルなどが見つかり、歴史の積み重ねを目の当たりにした。 「木の風景」木材展示場を兼ねた住宅 写真:山田 圭司郎 / YFT,
山口県長門市では地場広葉樹材による循環型林業を目指す人達のために、設えの美しさを見せる木材ギャラリーを考えた。各部屋毎の壁と床を、すべて異なる広葉樹材で仕上げている。日本で可能な山仕事の多様さを学んだ。 「長門おもちゃ美術館」地元の自然を知る体験型美術館 写真:山田 圭司郎 / YFT,
同じく長門市にて、より多世代に向かって、豊かな自然とそこから連なるものづくり文化を伝えるための空間を考える機会を得た。地域の山林の植生を写し取る形で、12種類の樹種によって内部空間を構成している。 定住社会を築いてきた今日、その場所での暮らしから建築を考え始めることができる。建築に向き合う時、常に人間に触れ続ける「床」について考える時間は多く、楽しい。「床」を考え始めると、その先に都市や自然が繋がっていることに、大変大きな魅力を感じている。 伊藤さん、ありがとうございました。
その土地に根付いた建築を考える時、床は地面を通じてその場所の歴史や周囲の環境と繋がって、その姿を現してくるように感じました。 これからもますますのご活躍をお祈りしております。 どうもありがとうございました。 |
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