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10月に入り今年も余すところ3カ月となりました。
皆様、寒暖の激しい毎日がつづきますがお元気にお過ごしでしょうか? さて、建築家コラム第7回目のゲストは日吉坂事務所代表取締役の「寶神 尚史(ほうじんひさし)」様です。 今回はどのような「床」にまつわるお話が聞けるのか、今から大変楽しみです。 それでは寶神さんのコラムをじっくりお楽しみください。 ![]() 日吉坂事務所(株) 代表取締役 1975年生まれ 1997年明治大学理工学部建築学科卒業 1999年明治大学大学院理工学研究科建築学専攻修了。 1999年〜2005年(株)青木淳建築計画事務所勤務 2005年日吉坂事務所設立 現在、京都造形芸術大学、明星大学、工学院大学、日本女子大学非常勤講師。 主な作品に、『house I』、『G.ITOYA 1.2.6.7.8階』、『KITAYON』など。 主な受賞に、2018年住宅建築賞 金賞 など。 http://www.hiyoshizaka.com/ 一昨年の夏、インドを久しぶりに訪れました。学生の時に貧乏旅行をして以来の、約20年振りの訪問だったので、当然ながら変わった部分の方が多い筈なのですが、「変わってないなぁ」という印象が強く残った旅でした。人々の生き方が変わってなかったというか、彼らの発するエネルギーが前回と同様だったのがとても印象に残る旅でした。いくつかの建築物も見てきたのですが、今回どうしても行きたかったところに階段井戸というものがあり、チャンド・バオリというインドでも最大級のものを訪問してきました。(写真1.2)階段井戸とは、その名の通り水源面のある地中深くまで階段状に掘られた井戸なのですが、見下ろすその光景は圧倒的で、どうやっても階段というか、床に目がいく、床そのものを浴びるような、強烈な視覚体験がそこにありました。地中深くまで反復する、階段が刻みあげた正確なリズムの中にあって、部材となる石の目地は猛烈におおらかに割付されており、そのことが巨大な全体スケールにもかかわらず親密な感覚をもたらしていました。力強
さと、おおらかさが同時にある、どこかインドという国に通じる感覚でもありました。 ひるがえって普段の仕事となると、とても繊細で、些細かもしれないことに反応しながら床の設計を行なっています。写真は去年取り組んだマンションのリフォームです。(写真3、4)ここではフローリングの割付を主題にしています。木材の割付を乱尺張りにしないことで生まれる、空間の方向性や正確さへの表明、あるいは框となる金属をフローリング幅とおおよそ同じにし、フローリング幅を顕在化させること。また異素材であるタイルの目地割と対話させることで生まれる互いの強調など、互いの反応を意識しながら設計しました。また、通常のフローリング部分と同仕上げのままヘリンボーンを用いて繊細さを表現し、またその時に、目地の無いカーペット空間を通り抜けた後にヘリンボーンに出会う体験とすることで、その繊細さを強調することを行っています(写真5)。
こうして書いてみると、一見したところ次元の全く異なるチャンド・バオリとマンションリフォームですが、自分自身の関心の持ちようとしては一貫して目地の問題を見続けているようです。
やはり床とは、目地と向き合うことなのだ、と思うと同時に、その決定のコントロールにおいて、もっと様々なまだ知らぬ世界があるはずであり、だからこそまた明日から頑張るか、と思うのでした。 寶神さん、インドのチャンド・バオリは写真でも感動を覚えるくらいですから実際目の前にすると相当インパクトが強いんだろうなと思いました。 ひるがえって現代のマンションとの比較を通して「目地」にご自身の関心を発見されたのは大変興味深く感じました。 丁度、先月、イタリアはボローニャで開催された「CERSAIE」を視察したため、タイルの一つの生命線でもある「目地」に私自身興味を抱いたからなのかも知れません。 これからもますますのご活躍をお祈りしております。 どうもありがとうございました。 |
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