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建築家コラム 第1回ゲスト「菅原大輔」様 2017年09月29日 一覧へ戻る
IOCのWEBサイトをご利用いただいている皆様、いつもありがとうございます。また、「建築家コラム」へご来場いただき重ねて感謝申し上げます。

弊社WEBサイトでは10月から、建築家、設計士、デザイナーの皆様から「建築における床の意味や意匠」についてご意見をいただく、「建築家コラム」をスタートしました。

普段は建築全体を考えることはあっても、「床」にフォーカスして建築を考えることは少ないと思いますが、敢えてフォーカスすることで新たな発想やアイデアに繋がれば幸いです。

第1回目のゲストは、株式会社SUGAWARADAISUKE建築事務所の代表でもある、建築家の「菅原大輔」さんです。
 ■建築家コラム 第1回ゲスト「菅原大輔」様 拡大写真 

Profile
菅原 大輔(すがわら だいすけ)
建築家(一級建築士) ・ アートディレクター
日本大学・東洋大学非常勤講師
早稲田大学創造理工研究科博士後期課程在籍
日本建築学会正会員/GSデザイン会議正会員
山梨県景観アドバイザー

1977- 東京に生まれる
2000- 日本大学理工学部建築学科卒業
2003- 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了
2003- 一級建築士取得(一級建築士 : 登録312817号)
2004- C+A tokyo / シーラカンスアンド・アソシエイツ
2004- 05Jakob+Macfarlane(フランス)
2006- 07Shigeru Ban architect Europe(フランス)
2007- SUGAWARADAISUKEを設立
2011- 16被災地支援団体陸前高田燈すプロジェクト:りく×トモ設立運営メンバー
2013- 日本大学理工学部非常勤講師
2015- 16早稲田大学創造理工学部非常勤講師
2015- 16GROUNDSCAPEpaper編集長
2016- 東洋大学理工学部非常勤講師
2016- 早稲田大学創造理工研究科博士後期課程在籍中
2017- 株式会社SUGAWARADAISUKE建築事務所に改編

日仏の建築事務所で10か国22都市のプロジェクトを担当し、帰国後独立。
クライアントや、依頼された状況に求められるデザインの対象とそのスタイルを見極め、
分野を横断してモノ・コトを扱いながら、場所と時間の価値を編集します。
その射程は、まちづくりからから建築、ブランディングから被災地支援に至るまで多岐にわたり、クライアントの未来と新しい時代に求められる「物語る風景」のデザインを目指しています。
仕事は国内外で評価・出版され、受賞歴も多数。

 ■建築家コラム 第1回ゲスト「菅原大輔」様 拡大写真 

森の段床 設計:SUGAWARADAISUKE建築事務所
5枚の床によって、様々な森との関係と人の振る舞いをつくる別荘計画


 ■建築家コラム 第1回ゲスト「菅原大輔」様 拡大写真 

外観:森に浮かぶ5枚の段床と、それを包囲する様々な素材面
 ■建築家コラム 第1回ゲスト「菅原大輔」様 拡大写真 

内観:高さの異なる床が、行為と場所、建物と森の関係を作り出す
●菅原大輔さんコラム

文明と文化は、ゆたかな「床」にある

このコラムを始める前に、「床」とは何なのか?自分なりに整理してみたいと思います。なぜならば、このコラムが「床」という建物の一部位をテーマとした特殊なものだからです。そこで、私たちが暮らし、最も慣れ親しんでいる住宅をその手掛かりとして、考えていきたいと思います。

住宅という言葉を思い浮かべると、雨をよける大きな「屋根」と、内外部や部屋を仕切る「壁」が思い浮かびます。しかし、「屋根」や「壁」支えるためにも、住宅内部で私たちが生活するためにも、先ずは「床」が必要です。「床」は、住宅の中で唯一触れる面であり、重力のある世界でヒトとモノを関係づける水平面であり、人間のくらしが展開する舞台のような場所です。
「床」のイメージというと、フローリングやじゅうたん、畳やタイルといった様々な材質が思い浮かびますが、その材質の違いは見た目の趣味嗜好だけが理由ではありません。材質によって、歩いたり座ったり寝転んだりするヒトの行動を支える場所になります。また、茶道では畳の上がテーブルの役割を果たし、床の間が季節を彩るように、モノの居場所にもなります。つまり、私たちの暮らしの中で、最も重要な住宅の部位の一つが「床」といえます。

そう考えると、「床」こそが文化や文明を支えているのではないか?という、仮説が浮かんできました。そこで、文化・文明がなかった頃、つまり「床」がなかった頃を考えてみましょう。大昔、生物が奇跡の確率で誕生しました。その一部は陸に上がり、陸上で植物と分化した動物は水やエサを求め、大地を縦横無尽に駆け巡りました。やがて、人間は大地を締め固めた土間の床と大地から浮いた高床を発明し、竪穴式住居や高床式住居という文明史初期の住宅をつくりました。そして、土間や板の間に続き、畳や縁側、床の間や神棚、お膳や階段など、様々な床を生み出し、文化や文明を進化させていきました。正に、「床」の発見こそが、動物から人間を区別した、文明・文化の起源であるといえるでしょう。

社会の仕組みや価値観が大きく変化している現在、住宅の「床」に大きな可能性を感じています。それは、活動が異なる家族が程よい距離感と親近感で集える小上がりのような床かもしれないし、会話する機会が少なくてもお互いの興味が共有できる棚のような床かもしれません。いま一度、「床」の可能性に着目し、ヒトとモノの新しい関係を築くことこそが、次世代のゆたかな暮らしを支えると考えています。


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